「海外ドラマを見ながら、英語を学ぶ」のは、数多くある英語の勉強法の中でも最も楽しいものの一つですよね。この楽しみを味わってしまうと、TOEICの教材に戻ってくるのが大変になってしまうほどです。
しかし、『話されている英語が難しすぎて、結局、日本語訳だけで楽しんでしまった』という方に多く出会ってきました。私も、楽しめるようになるまで何度も挫折してきました。
今回は、海外ドラマで英語を勉強しようとして挫折したことがある方、NHKの英語番組が好きな方、フレンズが好きな方、フレンズで英語を勉強したい方に向けた内容です。
結論から先に言ってしまうと「海外ドラマの英語が難しすぎたら、『おとなの基礎英語』から始めるのがいいですよ」という内容です。
最後の方で、『フレンズ』が英語勉強用としていかに優れているのかと、視聴時の「便利機能」ついても説明します。
では、いってみましょう。
海外ドラマで「挫折しない」ための工夫
色んな人から『英語を勉強するなら、フレンズを観たほうがいいよ』と薦められたので、私もそうしました。しかし1回目は挫折しました。
原因は3つありました。第1話が面白くない。英語が早すぎて聞き取れない。字幕を出しても意味が分からない。
私は海外ドラマが大好きで、既に『ブレイキング・バッド』『ケーム・オブ・スローンズ』『ウエストワールド』は日本語訳で楽しんでいました。『フレンズ』は前々から知っていましたが、映像が古臭く・ホームコメディ特有の「観客の笑い声」が嫌いで、きちんと見もせずにいました。
実用性のある英語を、ドラマから学びたくなってから「オフィスもの」か「日常生活もの」で面白そうなドラマを選びました。それが『マッドメン』でした。このドラマは1960年代のアメリカの広告業界を描いていて、第1話から面白い内容でした。しかし、英語学習用としては適していませんでした。
『マッドメン』は、ドラマが重苦しいので、気軽に何度も観るのに向いていなかったのです。なにより、英語が早くて殆ど聞き取れませんでした。「英語で楽しむ」には程遠く感じて挫折しました。
TOEICの勉強と同じですが「自分のレベルに近いものを選ばないと、効果が低く、挫折しやすい」です。
簡単な英語が使われるドラマを探したところ『おとなの基礎英語DVD』を見つけました。
『おとなの基礎英語』のレベルは、だいたい中学レベルです。
ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)のA2レベル(日常生活でのきわめて簡単な言い回しを理解し、ごく基本的なやりとりができる)を目指す学習者向けです。
(中略)
英語のレベル設定にも気を配りました。みなさんのレベルにとって、高すぎても低すぎてもいけません。そして、ドラマを通して学ぶので、各表現について、どのような状況、どのような人間関係で使うのかを感覚的に理解できます。松本茂『おとなの基礎英語』
DVD1本に100話が収録されていて、1話1話が短く「スキマ時間」にちょっとずつ見ていくことができます。物語は繋がっているので100話一気に見ても楽しめます。
本は、このように見開き1ページに1話がまとまっているので、映像と本を両方見ながら勉強するのも楽ちんです。
単語やフレーズの説明も載っているので、ここも挫折しにくいポイントです。
『おとなの基礎英語』について、この後詳しく解説するとして、まずは「ドラマで英語を学ぶ」メリットについて簡単にまとめておきましょう。
- フレーズの「適切な使い方、使う状況・人間関係」まで理解できる
- 楽しいので、何度も見れる/聞ける
- 特に、スピーキング力UPに効果がある
メリット❶は説明不要でしょう。
メリット❷が特に重要です。私は『マッドメン』は面白かったが、気軽に何度も見たいという作品ではないと書きました。何度も見れるドラマは「適度な軽さ、ゆるさ」が必要です。このことについては、後で詳しく説明しますね。
メリット❸は意外かもしれません。もちろんリスニング力も、英語字幕を観ることでリーディング力も上がります。しかしスピーキング力を上げるのに特に効果があったなと感じています。
『おとなの基礎英語』とは別に、NHKでは『しごとの基礎英語』という番組も放送されていました。こちらの講師の大西泰斗さんは「英会話」についてこのように言っています。
もし今ひとつ英会話に自信が持てないとしたら、その原因はただ1つです。
頭に入っているまとまった英語表現が圧倒的に足りない。
英会話の本質は「使い回し」にあります。ネイティブは、誰も使ったことのない、新しい文を常に編み出しているわけではありません。ほとんどの場合、どこかで習った、読んだ、拾ってきた膨大な表現を頭に溜め込んで、適宜使い回しているだけです。私たちが話せないのは肝心の使い回すことのできる表現が圧倒的に少ないからなのです。
大西泰斗『しごとの基礎英語』
ドラマでは、同じフレーズが何度も登場します。『フレンズ』でも『おとなの基礎英語』でもです。同じフレーズが、様々な状況で使われます。その状況に合わせて俳優が「気持ちを込めて」変化に富んだ声色でフレーズを発します。
皆さんも、好きな映画やドラマの「あるセリフを、ついつい口ずさんでしまう」という経験ってありますよね。そのセリフの言い方が、妙にキャッチーな音だとしたら真似したくなります。
そうです。この真似したくなるセリフ。脳内で何度も再生されるセリフが、日常の英会話でもスルッと出てきてくれます。
『おとなの基礎英語』日本人向けの最高の教材
テレビで『おとなの基礎英語』が放送されていた頃、1話ずつ見ていた方もいるでしょう。私も1話ずつオンエアで見ていましたが、いまいち楽しめませんでした。そんな方も、DVDでドラマとして全話を一気に見てみてください。違う印象を持たれると思います。
(2018年の4月で『おとなの基礎英語』の放送は終了してしまいました。2019年現在は『おもてなしの基礎英語』となっています)
『おとなの基礎英語』は、海外への「旅」が描かれているので、旅番組が好きな方、特に『朝だ!生です旅サラダ』が好きな方は気に入ると思います。旅と英語は相性がいいです。海外旅行で、英語を使ったときの嬉しさや、空港で英語を聞けて・読めたときの安心感を味わったときの記憶は強く残ります。
NHKが作っているだけに、流れる「音楽」も、ほっこり癒やされるものばかり。久しぶりに見て、ノスタルジーを感じてしまう映像の作りは流石NHKクオリティ。DVD1本を観終わったころには、教材と分かっていてもジーンとこみ上げてくる不思議な感動があります。
中学レベルの英語でありつつ、大人が使っても自然な英語フレーズが選ばれているので、非常に実用性が高いです。私はドラマのフレーズを、俳優の声を脳内再生しながら、そのままソックリ使うことが度々あります。
ドラマは「適度な軽さ、ゆるさ」があり、何度観てもつらくない内容です。『おとなの基礎英語』と『フレンズ』に共通しているのは、この部分です。毎日コッテリとした料理よりも、あっさりしてるけど毎日食べられる料理がいいですよね。
アクション映画や、バイオレンス・セクシュアル映画は、興奮度を上げるために「会話やナレーション以外の見せ場」が重要視されます。英語を勉強しようとしているわけですから、同じ1時間のドラマでも「セリフが多い・会話量が多い」ものを選びたいですよね。
『おとなの基礎英語』と『フレンズ』には、魅力的なキャラクターが多く登場します。『おとなの基礎英語』のシーズン1から3までの主人公である「美佳」を演じる肘井美佳さんは、シーズンを経るごとに魅力的になっていきます。
「美佳」に出会う現地の人達は、美佳の人間性が好きになっていきます。英語を上達させることよりも「大切なこと」を美佳が教えてくれます。
主人公の美佳は、自分の英語を駆使して様々なことにチャレンジしていきます。ときには身振り手振りを交えながら、自分のしたいことを自分の言葉で表現する。こうした姿勢こそ、私たちが最も参考にすべきものかもしれません。
NHK 鵜川陽一『おとなの基礎英語』
シーズン3までに旅する国は、シンガポール、香港、タイ、ニュージーランド、マレーシア、ベトナム、台湾、ハワイ、香港、マカオです。それぞれの国で出会う人物たちも、気持ちのいい人ばかり。「アジアの英語」が多く登場するのも、このDVDの大きなメリットです。これからのビジネスの中心地は、ますますアジアになっていきますからね。
「勉強法」の本題に戻りましょう。
『おとなの基礎英語 DVDブック』の使い方です。
『おとなの基礎英語 DVDブック』の使い方
1回目は「英語字幕」で観る
2回目は「日本語字幕」で観る
3回目は「英語字幕」で観る
4回目以降は音声だけにしたものもスキマ時間に聞き、映像も定期的に観る
音声だけでも楽しめるのが『おとなの基礎英語』と『フレンズ』のいいところです。家事をしながら音声を聞き、映像を思い出しながら、セリフを真似て楽しんでみて下さい。これがスピーキング力と総合的な英語力をグンと上げます。
DVDから音声だけを取り出す方法ですが、検索すればすぐに見つかります。パソコンでDVDを再生しながら、無料録音ソフトで「音だけ保存する」方法もあります。
もう一つ、効果的な使い方を紹介します。それは、実際に旅行する時に、映像をスマホに入れて持っていくことです。旅行中のスキマ時間に観ることで、英語を身につくスピードも上がりますし、思い出として強く脳に焼き込まれるので定着率も高くなります。旅行から帰ってきてから、DVD見返すたびに郷愁を感じながら楽しめるのもいいですね。
最後に「シーズン4」について軽く触れておきます。シーズン4は、今までよりもストーリー性を弱め、1話ごとに完結する形式を採用しています。これによって英語を学びやすくなっています。しかし、ドラマの面白さという点では残念ながら弱まってしまっています。同じ俳優が何役も演じていたりして、ドラマというよりもコメディ色が強まっています。旅する国は、サイパン、マレーシア、マラッカ、シンガポールです。最後のシンガポール編は、シーズン1の最初と見比べて楽しめたり、音楽も相変わらず和む曲が多かったり、観光地として人気のマラッカが出てきたりと見どころは多いので、シーズン3まで観て『もっと見たい』と思った方は観るといいでしょう。
『フレンズ』食わず嫌いは勿体無い
多くの先輩達が『フレンズ』の魅力を書いてくれているので、私の方からはちょっとだけお薦めの理由と、便利機能だけお伝えしたいと思います。
まず『フレンズ』の第一話は面白くないです。今の海外ドラマに見慣れた人にとっては、これだけで第二話を見なくなってしまいます。視聴者は「第一話はお金も知恵も多く注ぎ込まれている」ことを知っているからです。制作陣も第一話がコケたらアウトと覚悟して作っています。
ちょっと待ってください。『フレンズ』は第2話からどんどん面白くなっていくんです。なのでとりあえず第5話までは観てください。
『フレンズ』が英語の勉強用として有り難いのは、南谷三世さんのサイトをはじめ、ファンの方の詳しい解説サイトが多く、使われているフレーズなどを調べようと思ったときは、先輩達が手厚くカバーしてくれます。単に日本語訳を読むだけでは分からない「別の意図・意味」などが、先輩達のサイトから知ることができ、もう一度観てみようという動機にもなります。ここまで日本人による翻訳が充実している海外ドラマは『フレンズ』ぐらいです。これがお薦めする大きな理由でもあります。
『フレンズ』の6人は声だけでも楽しめます。意地悪な言い方や、奇声じみた言い方は、音としてキャッチーなので、真似したくなります。
※注意!DVD版の「英語字幕」は、実際に言っているのに字幕に出ていないところが幾つかあります。音だけ聞いてリスニングを強化したい方はネットで、フルセンテンスのスクリプトを探すといいでしょう。
最後に、便利な「視聴機能」を紹介して終わりたいと思います。
これは、「Netflix」で『フレンズ』を視聴するときに使う機能です。(『フレンズ』の初期はSD映像作品なので、ネットフリックスの一番安い月額800円のプランでいいでしょう)
社会人の方は、自由な時間が少ないと思いますので、最初のうちは「英語字幕と日本語字幕を同時に表示させて視聴する」ことをお薦めします。
Google Chromeに、拡張機能「Netflix 同時字幕で英語学習」もしくは「Language Learning with Netflix」をインストールすることで、英語と日本語を同時に表示させることができます。探せば他の拡張機能もあると思いますので、好きなものを使ってみて下さい。
同じChromeの拡張機能「Weblioポップアップ英和辞典」もインストールしておけば、英語字幕の単語にマウスを合わせるだけで「意味」が表示されて、その場で「単語の登録」まで瞬時に出来てしまいます。1話ごと観終わったあとに、知らなかった単語をWeblioのフラッシュカードで覚えていくようにすれば、シーズン1の24話を観終わったころには、相当な語彙力が手に入ることになります。これは本当に力がつきますよ。
以上になります。
それでは、楽しい英語ドラマライフをお過ごし下さい!